1 陽花

中居が原&WBC小久保監督と対談A

 原「特徴としてはスピード、そして全力でプレーができる、それと自己犠牲ができる。これは絶対世界でナンバーワンのチームを作ろうと思いました。パワーとか、テクニックだとかは、日本代表より勝るチームはあるんだろうな、と想像できましたから。やっぱり一番最初に考えたのは、イチローをどこの打順に置こうかと。最初(強化試合で)は3番でスタートしました。そしたら、状態的に居心地良さをあまり感じなかったんですね。彼ともちょっと話をして、『俺、独り言言うよ』と。『独り言言うから、君も独り言のように言ってくれ』と。『イチローは3番より1番がいい?』って言って。そしたらね、独り言で彼も『はい』って。よし、分かったと1番と3番を(本大会では)ひっくり返した」

 当時メジャーリーガーだった福留、岩村、城島を下位に置いたこともあった。それは名前だけで打順を決めるという固定観念にとらわれない原監督らしい用兵だ。

 原「メジャーリーガーですよ。しかし、僕はあえて状態というものを見たときに7、8、9だなと。そういうところからスタートしてチームが一つになれたのかなと。逆にメジャーリーガーを中心にすべてを作っていたなら、果たして全員が『よーし、このチームは自分のチームだ』と思って戦えたのかなというのはあった」

 小久保「3番・イチローに続く選手たちに、普通は(メジャーリーガーを)クリーンアップにすると思うんですけど、プライドがあるのを分かっていながら、7、8、9に据えることができたという強さと言いますか。それがないと、勝てないんだなというのは感じましたし、日の丸を背負ってる、勝つためだからこそ犠牲になれると思うんですよね。自分の中でそれが課題だと思います」

 国際大会は、国内のリーグ戦のように全てが順調に進むとは限らない。王監督が指揮を執った第1回の06年も、米国との2次リーグ初戦で、三塁走者・西岡のタッチアップが早いとして判定が覆る“誤審”があり、09年も練習時間が急きょ変更になったり、キューバとの第2ラウンド敗者復活戦では濃い霧が立ちこめたりと予想外の出来事が起きる。だが、すべてを味方につける大きな心を持つことが大切だ。

 中居「予選は東京ドーム。でもアメリカで屋外になると、風も気候もあるでしょうし、また守備隊形も変わってくるんじゃないかなと。そこらへんでの微調整というのが出てくるかもしれませんよね」

 小久保「特にピッチャーは湿度が低くなるので、最初(練習で)アリゾナに行かなくちゃいけないけど、行った途端、変化球が曲がらなくなったりということは、過去の経験者から聞いてます。そういうところの対応は必要になってくると思いますね」

 中居「原さん、監督としてでもいいですし、これからWBCを戦う選手にエールでもいいですし、大事なこと必要なこと、一番考えないといけないことを教えていただきたい」

 原「東京ドーム、日本で行われているときは自分たちのペースでできるでしょう。でも、(準決勝以降の)ロサンゼルスなど外に出ると、周りすべてが敵に見えるケースがある。ただ、敵は相手チームだけ。グラウンドであったり、空気であったり、ファンであったり、そういうものを全て味方にする。そういう考え方でいかに戦えるか。何が起こったって不思議じゃないってね。そういうふうな考え方になると、日本代表として気持ちが(積極的に)前に出るような気がする」

 中居「環境が変わっても、監督が一番どっしりしてないといけない立場かもしれない」

 小久保「国際大会は何が起こってもおかしくないというところからのスタートだと思っている。選手にも言ったのは、少々の照明の暗さだったり、審判との相性もある。ストライクかなと思ったのをボールだと言われたとしてもおかしくない。そういうことを肌で感じている選手が集まっている。あとはスコアラーを含めてデータの部分でも、準備も含めて、これだけはしておかないといけないと思うことはしてきたつもり。あとは原さんがおっしゃったように、覚悟を決めて進むしかない」

 中居「世界一奪還ですから」

 原「我々、応援団がついてるからね」

 中居「微力ながらですが、応援させていただきたいと思います」

続く→