1 陽花

【オリコン】ドラマ『教場』木村インタビュー@

■木村拓哉が挑んだ“パワハラ”時代への逆行 非情な教官役は「リアルと120度くらい違う」

 フジテレビ開局60周年特別企画・スペシャルドラマ『教場』(来年1月4、5日 後9:00)で主演を務める俳優の木村拓哉。カリスマ教官・風間公親の風ぼうにあわせ、自身初の白髪頭にも挑戦する木村がこのほど、合同のインタビューに応えた。

 原作は、推理作家・長岡弘樹氏による警察学校を舞台とした同名の小説。木村が演じる風間は元神奈川県警察捜査一課の刑事で、常に冷静で厳しく人を寄せ付けないところがあり「警察学校とは適性のない人間をふるい落とす場である」と考え、生徒が何かトラブルを抱えたときには、退校届を突きつける非情な教官だ。クラスメート30人が“教場”という名のサバイバルゲームを生き抜く姿と、生徒たちに非常識ともいえる謎の試練を与える風間の思いも描かれる。生徒役では、工藤阿須加、川口春奈、林遣都、西畑大吾、大島優子、三浦翔平らが名を連ねる。

■警察学校訪問で見えたリアルとの差 全員が“筋力”を持って挑んだ

 木村は、実際の警察学校を訪問し雰囲気をつかみ取るところから撮影に臨んだ。「いま現在は、いかにして入校してくれたみなさんを最後まで1人の脱落者も出さないように現場に送り出すからしいんです」とふるい落とす風間とリアルの違いを実感。「180度まではいかず、120度くらいはリアルと違うものになっている。何をやってもモラハラ・パワハラと言われる時代にこの作品を作る筋力というものを、スタッフ、監督、出演者全員が持っていると思います」と世間の目が厳しくなっている時代に同作を生み出した意義を語り「だからかもしれないですけど、リアルとの誤差がすごく楽しかったです」と続けた。

 さらに「ひとつの欠片しか見たり感じたりしていないとは思いますが」と前置きした上で「これから警察官になっていくんだという人たちが『誰々先生の学級を卒業する』というひとつのクラスそのものが人生に大きなものになっているんだろうなと感じましたね。小中高や大学とは違う学び舎なんじゃないかと思います」と振り返った。

 また、同作を通して日夜働く警察官へのイメージの変化も実感。「現場に立たれている方は、間違いなくこの警察学校にある時間を絶対的に過ごしている。卒業した人しか立てない場所なので、やはり特別な存在なんだなと」と話す。幼少期に剣道を習っていたという木村は師範代が警察官だったことを明かし「どこかリアルな接点があったんですけど、『警察官=ルール』みたいな感覚があったんです。でも、ここに至るまで人が人に教えているんですよね。そこはイメージの変化を感じるようになりました」と警察官が機械的な存在ではなく“人間”であることへの認識を深めた。

■熱量が徐々に上がった現場 きっかけは三浦翔平の一言

 「間違いなく豪華な熱量だった」と現場に携わった人たちの熱い思いを感じた木村。生徒役キャストとのエピソードを聞かれると「夜になりますよ?」と笑いながら答えるも、工藤、大島、三浦たちとの時間を一つひとつ丁寧に言葉にしてくれた。

 「湾岸スタジオの何のセットもない蛍光灯だけの空間に選ばれし30名が立っているんですよ。警察官役だから衣装に着替えて、(撮影当時)暑かったので帽子をうちわ代わりにしていた子もいて。最初はコスプレから始まって、自分も最初の段階では風間役をやるとして現場に行ったんです」と木村が言葉にした“熱量”は必ずしも始めから高かったわけではなかったそう。

 「(30人が集まった)3回目くらいに、三浦翔平が『主要メンバーでパーソナルな時間を作りませんか?』と言ったので集まったんです。各々感じていることがあったらしく、号令をかけて。彼らは(動きに対して)『どうですか?』と聞かれたので、『どうですか?』ではなくて、カメラの前に立つ状態が10だとしたら今はいくつだと思うかみんなに聞いたんです」。

 「『2もいってないと思います』と言って、(撮影前に)トレーニングをするような機会が残り3回くらいしかなかったので『きょうまでに5にしようと』話したんです。プロデューサーやスタッフにお願いして、自分もその場に立ち会うならしっかりとした状態の風間でいるべきだと思って、役に近い状態で現場に入るようにしました」と生徒役のキャストが“熱量”を上げるきっかけを作ってくれたことを明かす。

 「何も言わなくても帽子であおぐ人間もいなくなったし、待ち時間に背もたれを使う人もいなくなった。そこから撮影当日に向けて全員のギアが入ったというか、撮影が終わって『帰っていいよ』となっても、帰る人がいなかった。『付き合っていただけますか?』と言われるので号令をかけていかにできるようになるか、ひたすらと。それは大島優子だから、工藤阿須加だから、三浦翔平だからではなく、全員がやっていましたね」と生徒たちの成長を実感するとともに、カメラが回っていなくとも木村自身も教官としての立場をまっとうした。

続く→