1 陽花

【モデルプレス】剛『ミッドナイトスワン』インタビューA

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◆草なぎ剛、トランスジェンダー役は「僕自身で良い」

トランスジェンダーを始めLGBTQの印象について「若いときからそういった方々と一緒にお仕事をさせてもらっていたのもあって特別なことだとは思ってなかったです。『男女抜きにして、話そうぜ』というか、人間として向き合うことが大事かなと」と話す草なぎは、凪沙を演じるにあたっても「役作りとしては僕としては何もやってなくて」と至って自然体。

「すごくメイクさんと衣裳さんが上手で、衣裳合わせのときから『なんかいけんじゃないかな』と思わせてくれました。後半では少し絞ったので、夜ラーメン食べなかったりとか、まあ普段から食べないんですけど(笑)、お酒飲まなかったりとかしましたけど、2日くらいだけですよ。あとはメイクと照明の力です」

長い髪の毛とコートをたなびかせながらハイヒールブーツで新宿の街を颯爽と闊歩するシーンが印象的。喋り方や所作に苦労しなかったか聞くと、「わりかし自然に。こういうものって多分やりすぎたらちょっとクサくなるかなと思って。事前に監督から資料を渡されて実際にトランスジェンダーの方に何人か会ったりもしたんですけど、色んな方がいて。そりゃそうですよね。だから僕自身で良いんだなと、変に女っぽくしなくて良いなと」とフラットに草なぎ自身が考える凪沙像を作っていけたのは、当事者に会った上で導き出した結論故。確かに、ステレオタイプな演技は一切見当たらないのに、確実にスクリーンに映るのは凪沙であって“草なぎ剛”ではなかった。

それでもヒールには苦労したようで「足が痛いので撮影以外はずっと草履はいてやせ我慢してやっていました。でもヒールを履くならあの歩き方が一番歩きやすくなるというか、そういう風にできているのかもしれないですね」と笑った。

5年ほど前から内田監督がトランスジェンダーの疑似親子の物語をつくりたいと構想し、やっと実現に至った今作。LGBTQを取り上げる作品はここ数年国内でも増えてきたが、「偏見もあるし、日本はその点まだ遅れているみたいなのでもっと自由に認め合えるような社会になると幸せですよね」と作品を通して伝えたい思いを語る。

試写を終え、草なぎはしばらく席を立てないほどの感動を味わったという。

「今までも自分の作品を観て『良かったな』と思うことはあったんですけど、今回は特に余韻に浸りたい気持ちになって映画館だったら2分くらい浸っていたかったですね。監督に『巡り会えて良かったです』と伝えました」

◆草なぎ剛、コロナ禍で感じたエンタメの役割

ステイホーム期間中は愛犬・クルミちゃんが赤ちゃんを出産。この日も「今日も散歩してきました」と目を細めた草なぎは「わりかしクルミちゃんと一緒にいて、子どもを産んでくれて子育てに必死だったので余計なことを考えなかったりして。あとはテレビとかYouTube、Amazonプライム、Netflixとか観たり…外に出て行きたい気持ちはあるけどクルミちゃんとエンタメのパワーで今も乗り切っている感じですね」とコロナ禍でエンターテインメントの役割も改めて実感。

「もちろん人の命が一番大事で最初に守らないといけないので、エンタメとかはその次になっていくんだけど、心が明るくないとつまらないし、生きていく中でエンターテインメントの世界ってとても需要があるものだなと改めて感じました。今まで普通にできていたことができなかったり、この経験を積んだから次のステップに良い方向に進めるんじゃないかなと思います。作品を通して人って元気になるなと改めて感じたりもしているので、沢山の人に楽しんでもらって、この作品を観てこの時期だからこそ話し合ってもらえたら」と呼びかけた。


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