1 陽花

SMAP、解散を発表K

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◆ジャニーさん心痛 「生涯、SMAPは自分の子」

 SMAPの25周年を誰よりも成功させたかったのは、ジャニー喜多川・ジャニーズ事務所社長だった。

 ジャニー社長は今年5月、SMAPの解散について初めて口を開いた。いつもの穏やかな口調とは正反対で、熱のこもった強い言葉で「冗談じゃない。解散なんて絶対にない」と断言。「SMAPはわが子と一緒。僕は彼らを信じている。僕に相談なく事務所を出て行くなんて絶対にない」と全幅の信頼を寄せ、25周年コンサートについても「盛大にならなければいけない。周りに遠慮して萎縮することはない」と全力のサポートを明言していた。

 SMAPの活動再開に向けた話し合いも、社長のこの言葉がきっかけで具体的に動きだした。

 本来、ジャニー社長は「社長」というよりも、根っからの演出家。普段はデビュー予備軍のジャニーズJr.やデビュー間もない若手の育成に力を注いでいるが、SMAPの25周年に関しては、自ら演出家として主導権を握り、エネルギーの全てをぶつけようと意気込んでいたという。個別面談に加え、5人全員を集めた会合も重ね、25周年コンサートをやるよう説得を続けてきた。収録現場で目も合わせないといった不仲説が絶えないSMAPが同じテーブルに着くこと自体、社長でなければ実現しなかったと見る関係者もいる。

 解散は避けられなかったが「生涯、SMAPは自分の子。変わらぬ愛情を注ぐ」というのは、日本最大のアイドル事務所を築く礎になったジャニー社長のポリシー。「このポリシーが揺らぐことはない」と事務所関係者は力強く話した。

◆1月の解散危機報道直後には…

 番組で生“謝罪会見” 存続を表明していた

 今年1月に解散危機が報じられた際、SMAPの5人は同18日にフジテレビ系「SMAP×SMAP」に生出演し、グループ存続を表明した。この“謝罪会見”は関東地区で31・2%の平均視聴率(ビデオリサーチ調べ)を記録し、視聴者の関心の高さをうかがわせた。

 横1列の中央に立った木村がまずは騒動についてファンに謝罪。続けて稲垣が「これからの自分たちの姿を見ていただき、応援していただけるように精いっぱい頑張っていきます」と活動継続を明言した。

 草なぎは「皆さんの言葉で気付いたこともたくさんありました」と語り、中居も同様に「今回の件でSMAPがどれだけ皆さんに支えてもらっているかということをあらためて強く感じました」とファンへの感謝をにじませていた。

 しかし、香取は「皆さまと一緒にきょうからまた笑顔をつくっていきたいと思います」と声を絞り出したものの、目に涙を浮かべ、終始うつむきがちだった。

 木村が「最後に、これから自分たちは何があっても前を見て、ただ前を見て進みたいと思いますので、よろしくお願いします」と締めくくった。

 ネットではSMAPの活動継続を喜ぶ声があふれる一方、「公開処刑のようだった」「みんな目が死んでいる」などという意見もあった。

◆派閥問題が引き金に

 芸能史に残る国民的グループの解散劇は、昨年1月の「週刊文春」の報道が発端となった。

 SMAPをデビュー当時から手掛けてきた女性マネジャーと、メリー喜多川副社長の長女で嵐や関ジャニ∞らを取りまとめる藤島ジュリー景子副社長との間に派閥があるのは周知の事実。紅白歌合戦などの歌番組を除いてSMAPと嵐が共演する場面はほとんどなかった。しかし、それは暗黙の了解。お互いの領域を侵さず、派閥問題が表面化することはなかった。

 ところが、「週刊文春」のインタビューにメリー副社長が応じたことで“パンドラの箱”が開かれた。同副社長は派閥の存在を否定しつつも、女性マネジャーをその場に呼び出し、ジュリー副社長がジャニー喜多川社長の後継者であると明言した上で「対立するならSMAPを連れて出て行ってもらう」と迫った。

 SMAPもメンバー4人が40歳を過ぎ、アイドルとしての在り方を考える時期に差しかかっていたのも事実。立場を失った女性マネジャーに同調し、一時は全員が独立を考えたが、将来を見据えた上で木村拓哉が翻意し、残留を決意。これを裏切りと受け止めた他のメンバーとの間に修復しがたい亀裂が生まれた。

<記者の目>アイドル高齢化時代の一つのモデルになるか

 着々と進むかに見えたSMAPの復活は、空中分解という最悪の結末となった。解散は12月31日だが、実際には既にグループとしての活動は休止しているに等しい。結局、今年1月から何一つ好転しなかった。

 第三者にはふに落ちないことも多いが、関係者の口から繰り返し出た言葉は「疲労」だった。トップに居続けることの重圧、抑圧、疲労。これ以上、何を成せばいいのかという虚無感。それはスターダムに上がった人間にしか理解できない感情かもしれない。

 一つ、希望を見いだすとすれば、SMAP解散はアイドル高齢化時代の一つのモデルケースになるかもしれないということだ。そもそもアイドルの旬は20代で、寿命は3年とも言われていた。それを変えたのがSMAP。ファン層を老若男女に広げ、多彩な分野に挑んだ結果、彼らは年を重ねてもアイドルであり続けることになった。例えトラブルがなくても、40を過ぎた男性が個別の活動を志向するのは当然かもしれない。

 これまでジャニーズのグループ解散はメンバーの退社を伴ったが、彼らは1人のタレントとして残る。年齢と実績にふさわしい仕事を彼らが見つけられるのか、ジャニーズ事務所が与えられるのか。この解散が「正解」かどうかは、そこにかかっている。

(16/8/14(日)東京中日スポーツ)