1 陽花

慎吾のピュアさが伝わったエピソード

■香取慎吾のピュアさ伝わった“握手事件” また少年のような笑顔で…

 記者が自分自身で“香取慎吾握手事件”と呼んでいることがある。

 2009年5月、香取の主演映画「座頭市 THE LAST」の撮影現場を取材に訪れたときのことだ。敵役を演じた仲代達矢と一騎打ちをする館のセットが組まれたのは、山形県鶴岡市の山中だった。標高が高い場所で、夜になるとかなり冷え込んだ。クライマックスシーンの撮影を見届け、香取の取材をすることになった。

 その直前、記者はどうしても用を足したくなった。山中ということで、トイレは工事現場に置かれている仮設のものだった。トイレから出て気づいた。手を洗う場所がない。取材開始時間が迫っていたため、そのまま会場に向かった。

 しばらくして香取が座頭市の姿のまま現れた。撮影現場が空港からもかなり離れた場所だったので、「きょうは、ありがとうごぜえやす」と座頭市の口調で報道陣一人一人に、握手しながらあいさつした。記者の番になった。

 「握手できないんです」トイレの後、手を洗っていなかったことが頭をよぎり、とっさに言った。香取は一瞬、えっ、なんで?という表情を見せた。そのとき、記者は会場の部屋の隅に流し台があるのに気づいた。「少し待っていていただけますか」流し台へ走って、手を洗う。「もう大丈夫です」と言って、握手を交わした。

 事情を説明すると、香取は記者をギュッとハグ。突然のことに面食らったが、その時「ピュアな人だ」と感じたのを覚えている。

 漢字は違ったが、記者も名前が「シンゴ」。それを告げると、「じゃあ、スポニチのシンゴさんね。僕はSMAPのシンゴさん」と、少年のように笑った。

 映画の取材が終わった後、香取が「スポニチのシンゴさ〜ん」と話しかけてきた。しばし雑談。

 「SMAPのシンゴさんは、いま何に興味があるんですか?」

 「動物かな。動物のテレビをよく見る」

 「魚も好きですか?それなら、お勧めのサメのDVDがありますよ」

 当時、サメがオットセイを捕獲するため水面から数メートルもジャンプする「エア・ジョーズ」というドキュメンタリー番組をテレビで見た。それがDVD化されていたため、勧めてみた。

 「サメが飛ぶってこと?え、何で?どういうこと?」SMAPのシンゴさんは興味津々、身を乗り出して聞いてきた。数週間後、香取が母親のように慕っていた女性マネジャーを通して、香取にDVDを贈った。

 今回の解散劇で中心となった香取。最近の「SMAP×SMAP」や「SmaSTATION!!」では疲れたような表情を見せる。解散後もソロでの活動が予定されている。再びあのときの少年のような顔で会話が交わせる日が来ることを、願ってやまない。 (記者コラム)


(16/8/23(火)スポニチ)