1 陽花

【報知】スマスマ最終回瞬間最高視聴率は27.4%B

◆【歴代担当記者が見たSMAPの軌跡】後輩の手本であり続ける「努力の人」たち

 担当時代、ジャニー喜多川社長に聞いた。「新しいグループを作るとき、どういう基準でメンバーを選ぶのですか」。ジャニー氏は「努力する子」と答えた。容姿や歌、ダンスを挙げると思っていたから、驚いた。

 草ナギ剛の努力を知ったのは、あの事件だった。2009年4月、東京・赤坂の公園で酒に酔って裸で騒いだとして逮捕された(起訴猶予処分)。草ナギといえばスキャンダルとは無縁、ドラマの役柄そのまま「いいひと」のイメージ。人気絶頂のトップアイドルが起こした前代未聞の不祥事はドラマ、CM、政界へと波及する騒動になった。

 草ナギに何があったのか。多くの関係者を取材したが、分かったのは事件の背景というより、「努力の人」。ドラマで共演した俳優によれば、撮影の合間に分刻みでダンスの練習や仕事の打ち合わせをこなし、いつ休んでいるのか心配になるほど。台本の読み合わせにも付き合ってくれて感激したという。当時、関係各所から事件に対する苦情はほとんど聞かれず、擁護の声すら上がっていた。事件翌日の謝罪会見は、誠実な受け答えが逆に印象を良くした珍しい例だと思う。

 草ナギは約1か月の活動自粛を経て、フジテレビ系「SMAP×SMAP」の収録で仕事復帰した。後悔と反省の日々を支えたのはメンバーだった。復帰会見で「僕の代わりに頭を下げてくれるメンバーを見て、自分の弱いところを乗り越える原動力になった」と話した。木村拓哉は「個人の活動のベースはチームにあるとつくづく感じた」と語っていた。森且行の脱退やメンバーの不祥事など、逆境をバネにきずなを強くしてきたのがSMAPだった。

 担当した5年間で多くのジャニーズアイドルを取材する機会に恵まれた。06年にCDデビューしたKAT―TUNを見た時は、ジャニーズを背負って立つ大器が現れたとわくわくした。しかしその後6人中3人が脱退。デビュー10周年の今年、事実上の活動休止となる「充電期間」に入ってしまった。個人が成長すればするほど考えに違いが生まれ、不協和音が生じる矛盾。多数のジャニーズJr.の中から「努力する子」と認められ、選ばれた人でも、グループを続けることは簡単ではない。

 解散が近づくにつれ、SMAPのCDデビュー15周年記念日となる06年9月9日、国立競技場のコンサートを思い出す。数人の後輩アイドルがステージを見守っていた。ファンのお祝いムードとは対照的に、V6の三宅健は「勉強のために来た」と真剣な表情だった。努力が報われることを示したSMAPは、解散しても後輩たちのお手本であり続けるのだろう。(芸能デスク・関野 亨)

(16/12/28(火)スポーツ報知)