1 鈴木♂

「電車男」再考

オタクに国境なし。ディズニーランドがあるカリフォルニア州アナハイムで
今月初めアニメ・エキスポが開かれた。コスプレや着ぐるみの高校生ら約4万
4000人があふれる会場で映画版「電車男」を見た。
女性とデートしたことがないオタクが電車の中で酔っぱらいに絡まれていた美女を
助け、ネット掲示板の仲間の助言を受けながら恋を成就させる物語だ。

観客の多くは十代の若者。字幕映画なのに間髪入れず反応する。山田孝之が演ずる主人公がエルメス役の中谷美紀と手をつなぐと「トレインマン(電車男)行け行け」
。エルメスが悲しい顔で「もう会わないほうがいいのかもしれませんね」と言うと
すすり泣く声が。見ると斜め前の席の女子高生が涙をぬぐっている。2人がキス
する場面ではウオーと地鳴りのような喝さいが起こり、男子学生が立ち上がって
ガッツポーズした。言語や文化の差は全く感じられない。観客は100%電車男の
気持ちに寄り添っていた。

米国の高校生活は人気度でヒエラルキー(階層)が決まる。一番人気は通常フットボール選手やチアリーダー。ほかに運動バカは「ジョック」、ガリ勉は「ブレイン」、演劇に熱中する「ドラマ」、麻薬漬けの「ストーナー」、どのグループにも属さない「ローナー」などと集団ごとに俗称がある。アニメや漫画、コンピューターゲームに没頭する米国版オタクは「ギーク」と呼ばれ、最下層を構成する。コンピューターの興隆やビル・ゲイツの活躍で、ギークの地位は昔より良くなったが、それでもつらいのだろう。電車男の映画を見終わった後で高校生の一人が「こんなのやっぱり夢物語。ギークに恋人はできないんだ」とつぶやいたのには泣けた。

「米国のコミックは勧善懲悪でマッチョすぎ。日本アニメや漫画の登場人物は血を流し泣く。ヒーローにも暗い側面があり、悪者にも戦う理由がある」。会場の高校生は口をそろえる。みんながフットボール選手やチアリーダーになれるわけがない。ギークの悲哀が日本のアニメや漫画のブームを下支えしているような気がする。
(後略)
                  (ロサンゼルス支局)毎日新聞 7月10日
(PC)
2 鈴木♂
これはアメリカで上映された東宝映画「電車男」の様子を描いた記事ですが
心の琴線に触れる内容を持ったお話はどこの国でもそれなりの評価を得るという
事じゃないかと思います。
この映画の様にオタクやヒッキー、マンガ喫茶といった日本独特の文化をモチーフ
にしたお話は海外では理解し辛いと思いますが、それでもアメリカの若者が共感
したという事は、「電車男」というお話の中には人類共通の何かがあったという事になるのかもしれませんね。
(PC)