1 鈴木♂

夏も近づいてきたので今回は鈴木♂が久しぶりに仕入れた怪談話を
書いてみます。
いつも通りの完全実話怪談で鈴木♂による脚色や肉付けなどは一切ありません。
落ちというかラストがちょっと意外なのですが実際の怪談話ってこんなもの
じゃないかなと思います。
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2 鈴木♂
これは私が最近知人のAさん(男性)から聞いたお話です。

今から二、三年前の秋にAさんは地元の後輩であるBさん(男性)から
ある相談というか告白を受けました。
それは自分の車(軽自動車)の運転席の後ろに得体の知れない何かが
いつも乗っているというものでした。
それはただ乗っているだけなら良いのですがコンビニで買い物をしたビニール袋
を助手席に置いておくと手らしきものを伸ばしてガサガサと中身を物色したり、
酷いときには運転中にいきなり肩を掴んでくるのだそうです。

更に詳しい話を聞くとどうやらBさんは地元にある総合体育館で行われた
イベントに行ったときに駐車場でその得体の知れないものを拾ってきた
みたいだという事でした。
Aさんは最初冗談だろうと思いながらその話を聞いていたそうなのですが
それを地元の仲間たちに話すと「じゃあみんなで確かめに行こう」という事に
なって、AさんBさんを含め総勢8人で中古で買ったというBさんの車を
確かめに行く事になりました。
(PC)
3 鈴木♂
何がいるのか分からないので最初は全員が車を遠巻きにして眺めていた
そうなのですが、Aさんはやがて車の後部座席に人の型をした真っ黒い影が
居るのが見えたそうです。
そしてその事を全員に確認すると8人中4人までがそれを見る事ができた
そうなのですが、その真っ黒い影のような人型はたぶん一番よく見えた
Aさんによると女性のようだったという事でした。

「それをカメラで撮影しなかったのか?」とそのとき私は聞いたのですが
「あんなにはっきり見えると逆に怖くて撮影なんてできないものですよ」と
Aさんは笑いながら答えてくれました。

それから全員でこれからどうするべきかという相談をしたそうなのですが
運転中に肩を掴んできたり実害があるのだからお祓いというか徐霊をして
車から出て行って貰うべきだろうという結論に達して、そういった事のできる
地元の霊能者というか霊媒師に依頼して徐霊をして貰う事になったそうです。
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4 鈴木♂
その当日AさんとBさんと仲間数名はその霊媒師の家に行ったそうなのですが
霊媒師が家から出てきて車に近づくと無人のはずの車のドアがいきなり
ロックして、その得体の知れないものは「絶対に出て行かない」という
意志表示をしました。
霊媒師は仕方がないので車の外から中にいるものを観察したそうなのですが
「そんなに悪いものじゃないからたぶん大丈夫だろう」という結論に
達したそうです。

そしてそれからその霊?は日を追うごとに少しづつ大人しくなってきて
イタズラもしなくなり当のBさんは「もう出て行ったみたいですよ」と
Aさんに言ったそうなのですがその頃はまだAさんが車を見てみると
後部座席に黒いものが見えたそうです。

そして最終的には二か月位掛かって車に居座っていた霊は出て行ってくれた
そうなのですが、その車はその年の冬の雪道で横転して完全に引っくり返り
廃車になりましたが運転をしていたBさんは殆ど無傷で助かりました。

その現場の道路は私も通った事があるのですが「あんな直線の緩い坂道で
車が横転するはずがない」というAさんの証言通りの道でした。
(PC)
5 鈴木♂
ドアを開けたり物理的現象を起こせる霊ほどパワーが強いと言いますが
全然知らない通りすがりの霊でこの場合良かったなと思います。
これがもしBさんに恨みを抱く霊だったら間違いなく殺されていましたね。
黒い人型の影って鈴木♂も高校生の頃に友人の家で見た事がありますが
全く光の無い闇で向こうが見えないという感じの影でした。

具体的な場所や人名は今回も書きませんでしたが新潟県下越地方のちょっと
山沿いの所で二、三年前に本当にあったお話です。
何事も無いような平穏無事な日常生活を送っているように見えても世間には
こんな表に出ないような怖い事が起こっているんだという事ですね。
(PC)