33 しす
吉川三国志は当時まだ中国を舞台にした小説に馴染みのなかった日本人向けに色々と工夫されてるのがよく解ります。
例えば桃園結義の前に劉備がお茶を買いに行くシーンを入れることで黄巾の非道さ、張飛、芙蓉姫との出会いを描いています。
これで後の張飛との再会、関羽との出会い、芙蓉姫との悲恋を円滑に見せることに成功してます。
また先祖伝来の宝剣を登場させることで劉備の正当性を示した上で、母親への孝と、老いた母を残していくことの未練、そしてその母に促され波乱の人生の一歩を踏み出すというまさに日本人好みの演出オンパレード。
(ちなみに神話学者ジョーゼフ・キャンベルによると神話や物語の英雄たるもの、冒険に出るにあたって一度は迷いを見せねばならんようです)
その他にも劉安が自分の妻を殺して劉備をもてなすシーンを削ったり、劉備の妻女を一人にしたりというのも日本人向けのアレンジでしょう。
また終盤、孔明が司馬懿もろともに魏延まで殺害を計るも失敗、罪を馬岱に押しつけ兵卒に落とした上で魏延の部下にされてしまうのも吉川演出。
馬岱の人気は吉川三国志あればこそでしょうね。

余談ですが私は横光三国志の馬岱が忙牙長を斬るシーンで彼に惚れますた。
たぶん横光三国志の一騎打ちシーンで一番カコイイ!
(PC)