1 鈴木♂

遠野物語

ガソリンの販売制限も無くなって地震後にはすっかり姿を消していた茨城産
納豆などの食品も出回るようになってきた新潟県内なのですが、このサイトを
御覧の皆様方も如何お過ごしの事でしょうか?。


夏の電力不足「柏崎刈羽原発の休止炉」稼働で間に合うが…

首都圏(東京電力の管内)では来たるべき夏に危機的な電力不足が予想され
ている。7月末の需要予測が5500万kW、現在の供給量が3650万kWであり、
これから火力発電を復活させるなどして、せいぜい1000万kW程度の上積み。
まだ850万kWが足りないという。
そんななか、番組によれば不足分の約4割330万kWを供給できる「最後の選択肢」
があるという。新潟県の柏崎刈羽原発が中越沖地震後、全7基中3基が停止して
おり、これを再稼働させれば330万kwを発生できるそうだ。
げんぱつと聞いてコメンテイターの鳥越俊太郎が「うえー」ともううんざり
だといった声を出す。福島原発の惨状を見て原発はすぐにでも廃止したいと
思っても現在の電気に頼った生活はいまだ原発に支えられているのが皮肉だ。
もっとも、柏崎刈羽原発についていえば運転再開には地元自治体の同意が必要で
それはかなりむずかしいだろう――というのが、話のオチである。

               3月30日付けのJ-CASTテレビウォッチより

計画停電で大揉めに揉めている東京というか関東地方なのですがこれを知った
政府や経済界、東京都がこれからどう出るのかがちょっと見物ではないかと
鈴木♂は思います。
東京電力の福島原発があの有様で東北電力の女川原発も停止していますから
今現在、東日本の電力は柏崎の原発と東新潟の火力発電所が頼みの綱状態です。
(PC)
2 鈴木♂
東北地方というか三陸沿岸を襲った大津波のニュースを見て、鈴木♂は
遠野物語にもそんなお話があったなと思い出したので、ちょっと本棚から
柳田国男著「遠野物語」(明治43年刊)を引っぱり出して読んでみました。


九九

土淵村の助役北川清と云ふ人の家は字火石に在り。代々の山伏にて祖父は
正福院と云ひ、学者にて著作多く、村の為に尽くしたる人なり。
清の弟に福二と云ふ人は海岸の田ノ浜へ婿に行きたるが、先年の大津波に
遭ひて妻と子とを失ひ、生き残りたる二人の子と共に元の屋敷の地に小屋を
掛けて一年ばかりありき。
夏の初めの月夜に便所に起き出でしが、遠く離れたる所に在りて行く道も
浪の打つ渚なり。霧の布きたる夜なりしが、その霧の中より男女二人の者の
近よるを見れば、女は正しく亡くなりし我妻なり。思はず其跡をつけて、
遥々と船越村の方へ行く岬の洞ある所まで追ひ行き、名を呼びたるに、
振返りてにこと笑ひたり。
男はと見れば此れも同じ里の者にて津波の難に死せし者なり。自分が婿に
入りし以前に互に深く心を通はせたりと聞きし男なり。
今は此人と夫婦になりてありと云ふに、子供は可愛くは無いのかと云へば、
女は少しく顔の色を変へて泣きたり。
死したる人と物言ふとは思はれずして、悲しく情なくなりたれば足元を見て
在りし間に、男女は再び足早にそこを立ち退きて、小浦へ行く道の山陰を
廻り見えずなりたり。
追ひかけて見たりしがふと死したる者なりしと心付き、夜明まで道中に立ちて
考へ、朝になりて帰りたり。 其後久しく煩ひたりと云へり。
(原文ママ)
(PC)
3 鈴木♂
これを鈴木♂が現代文で意訳してみるとこんな感じでしょうか。


21915人の犠牲者を出した明治三陸地震(明治29年)の大津波で妻と子を失った
岩手県山田町船越・田ノ浜地区の男が流された自宅の跡に小屋を建て、残った
二人の子供と暮らしていたのだが、地震の次の年の霧深いある初夏の夜に
野外にあるトイレに行こうと小屋を出て歩いていたらそこに二人の男女が
歩いてきて、その女の顔をよく見てみると津波で死んだ自分の奥さんだった。
そしてその二人の後を追いトンネルに入る手前で奥さんの名前を呼んでみたら
自分を振り返って彼女がにこりと笑ってくれた。
そして男の顔をよく見てみるとこれも大津波で死んだ奥さんの元カレだった。

「今はこの人と一緒になってるの」と奥さんが言うので「子供は可愛くないのか?」
と聞くと奥さんは顔色を変えて泣き出してしまった。
死んだ人間とはとても思えない奥さんの言動が悲しくてそして自分が情けなくて
しばらく自分の足元を見て沈黙していたらその二人は足早に立ち去って行き
やがて見えなくなってしまった。
男は思わず追いかけようとしたが二人とも大津波で死んだ人間だと気付き、
そこで朝まで立ち尽くしてしまった。
そしてそれからしばらくの間、男は病んでしまった。
(PC)
4 鈴木♂
これが本当に津波で死んだ奥さんの幽霊と出会ったというお話なのか
それとも妻と子を亡くしたショックでPTSD(心的外傷後ストレス障害)に
罹ってしまったという不幸な男性が見た幻なのか鈴木♂には分かりません。
でもこういったお話は今回の地震でもいずれ出てくるのではないのかなと
鈴木♂は思います。
なお原文の文頭にある九九というのは遠野物語の第99話目という意味です。
(PC)