1 陽花

【報知】歴代担当記者が見たSMAPの軌跡

■【歴代担当記者が見たSMAPの軌跡】600人小ホールで目の当たりにした国民的アイドルの力

 取材しながら、圧倒されるシーンは幾度もあった。世界的なスターとの共演や、1000人とフラッシュモブを踊ったミュージックビデオ撮影。毎回、スケールのデカさに度肝を抜かれた。しかし、一番印象に残っているのは小さな公民館の舞台に立つメンバーの姿だ。


 昨年8月、震災で甚大な被害を負った岩手・山田町でNHK「のど自慢」をプロデュースした5人に帯同した(放送は9月)。番記者を卒業し、直接の担当ではなかったが、たまたま代打で行くことになったのだ。定員600人のホール。もちろんコンサートスタッフなどおらず、SMAP側も必要最小限の人数だった。「デビューしてからここまで小さい会場に立った記憶はない」とメンバーも振り返っていたが、今でもあの日のことが忘れられない。

 全出場者が出番を終えたあと、SMAPがサービスで歌った「世界に一つだけの花」は、自然発生的に大合唱になった。座っているのはファンではなく、町の人だ。誰に教わったわけでもない曲を、お年寄りも子どもも、同じ思いで声を合わせている姿が神々しく、「国民的ってこういうことなんだ」と涙がこぼれた。

 終演後、「のど自慢」のアンバサダーとして、それまで単独で3度MCを務めていた香取慎吾に「なんだか泣けてしまいました」と正直に伝えた。香取は「でしょ? 歌の力ってすごいよね。この景色を、みんな(メンバー)に見てもらいたかったんだ」と、少年のように笑った。

 そういえば、開演に先立ち観客全員とメンバーが交わした握手会では、今年1月に事務所を離れた女性マネジャーが、自らハガシ(進行をスムーズにするため、観客を誘導すること)を買って出ていた。ストイックな仕事ぶりから、周囲に「厳しい」と思われていた人だったが、あの日はうれしそうに裏方役をやっていた。規模など関係なく、メンバーもスタッフもファンも同じ方向を向き歩んでいくことこそが、SMAPの本質だったのだと思い知らされた。

 その1か月後、弁護士を立てての独立交渉がスタートしたという。真意はどうあれ、同じ方向を向けなくなってしまったことが単純に悲しく、脱力する思いだ。永遠に続くと信じて疑わなかった道は途絶えてしまった。しかし、この先も彼らの人生は続く。この28年、SMAPがわれわれに与えてくれたものを胸に、5人の未来を見守っていきたい。(2011〜14年担当・宮路美穂=芸能担当=)

 ◆SMAPと「のど自慢」

 放送70周年だった昨年、香取がスペシャルMCとして数回司会を務めたほか、グループでもたびたび出場して盛り上げた。昨年の紅白歌合戦には山田町の町民が出演し、SMAPと中継でやりとり。今年1月11日には、5人でグランドチャンピオン大会にゲストとして生出演した。解散騒動が表面化する2日前のことだった。


(16/12/30(金)スポーツ報知)