1 陽花

【朝日新聞Telling】吾郎『Blume』インタビュー後編@

■稲垣吾郎さん「中居正広さんの寄付、気持ちがうれしい」新しい地図のコロナ対策基金

「新しい地図」として活動している稲垣吾郎さん(46)の19年ぶりとなるフォトエッセイ、『Blume』(宝島社)が9月18日、出版されました。今回はコロナ禍でのエンターテイメントの重要性や有名人が果たす役割、寄付を募るファンドの設立などについて、お話をうかがいました。

◆厳しいときこそ、エンターテイメントが力になる
――新型コロナウイルス感染症の流行で、ご自身の生活スタイルや考えは変わりましたか?

稲垣: 世の中は本当に大きく変わったけれど、僕自身の生活にはあまり変化がないですね。不謹慎に思われるかもしれないんですが、みなさんが言う“おうち時間”みたいなのがもともと好きだし、家族と一緒に暮らしているわけでもないので。
仕事に関しては影響を極力受けないように、スタッフの方が環境づくりをしてくださっています。ラジオなんかも普通にやらせてもらってる。ただ、イベントやコンサート、舞台の中には延期になってしまったのもありましたね。
生活にはなかったですが、価値観の変化はありました。人に対する思いやりや感謝の気持ち、そして人とのつながりが、より大切だと感じるようになったんです。コロナがあるからというよりも、一人で考える時間が増え、立ち止まって色んなことを見つめ直すきっかけになったからだと思います。

――エンターテイメントは今後、どう変わっていくと思いますか?

稲垣: みんないま、模索している最中ですよね。もちろん生のよさがあって、舞台やコンサートは配信がある時代でも生で見てもらいたいし、お客さんも絶対、生がいいんだと思うんです。でもデジタルだからできることもある。
これから色んなエンターテイメントが、生まれてくると思います。生の楽しみはゼロにはしたくないけど、人それぞれ、生活に応じてピックアップできるのがデジタルの良さ。僕はデジタルとアナログの両方をまたいできた世代だし、それぞれの良さをちゃんとわかっていたいですね。「モノが好きでアナログを大切にしたい」というのは信条としてあるので、うまくチョイスしながらみなさんに届けていきたいです。

――今年はコロナの感染拡大があり、毎年のように大きな災害も起きています。災厄時の有名人の役割をどのように考えていますか。

稲垣: 東日本大震災の時に、「歌の力によってすごく救われた」との声をたくさん聞きました。あのとき、多くのアーティストが自分の生きる意味や、活動してきた価値を改めて感じたと思います。
僕もそうでした。出演していた番組で何度も被災地に行ったんですけど、「エンターテイメントが求められている」ということを痛感しました。
困ったときには現実から離れて、楽しい気持ちになりたいと思うことが僕もあります。音楽はメッセージを伝えることもできれば、腹抱えて笑いたいって気持ちに応えることもできる。ほかのエンターテイメントからも救われたり、勇気をもらったり、助けられたり、暇つぶしになったり…誰だって生きていたら厳しいことがある。そんな時の支えになる力が、あると思います。
届けた作品を喜んでもらえたり、誰かにとっての宝物のようになったりするなら、それ以上に幸せなことはありません。僕が何を求められているかは、人によってそれぞれだと思うけど、ちゃんと耳を傾けて、応えていきたいですね。


続く→