1 イレイザー健◆X0GH
ハーフノンフィクションノベル『復讐のガンマン』
とある廃屋、誰もいるはずの無いこの場所に夜中だというのに窓からランプの灯りがほのかに漏れている。「というわけでレッズが神龍会に戻ってきてくれたよ!」 興奮冷めやらぬ様子ではしゃぐ神。 「レッズが戻ってくれば百人力だな!」 「改めてよろしくレッズ!」神龍会のメンバーも次々にレッズに歓迎の言葉を送る。レッズは一度は神龍会を離れたものの、同じ目標を携え、再び神龍会の門を叩いたのであった。
2 イレイザー健◆X0GH
「なんか話のネタ尽きちゃったね、レッズ、なんか面白い話無い?」 「・・・。では、酒の肴になるかは分からないがある一人の男の話をしよう」 夜もしらじらと明けてきた頃メンバーのリクエストに答え、レッズは一度椅子に座り直したのち、淡々とある男の話を語りだした。 「マリア・・、お前の仇今こそ必ず・・」 カウボーイハットを深くかぶったその男はペンダントの中に入っている女性の写真にそう語り掛け、そして目の前にたたずむ巨躯の男を睨み付けた。
3 イレイザー健◆X0GH
今から数か月前、荒野で対峙する二人の男。 二人の間にはピリピリした空気が漂い、ただならぬ因縁があることがうかがえる。 「鮭とばぁ、久しぶりじゃのう、あの時以来か」 「探したぞゴンズラ、マリアの仇、貴様を必ず殺す」 「マリアか、いーい女じゃったのうあれは。殺すには惜しい女じゃった」 「俺達三人は小さい頃からいつも一緒だった、マリアはお前みたいな奴にでもいつも優しい回復厨だった!何故マリアを殺した!答えろゴンズラ!!」
4 イレイザー健◆X0GH
巨躯の男は、少し天を仰いだのち、いきり立つカウボーイ風の男に向き直り、今までとは違った口調で喋りだした。 「鮭とばぁ・・ワシはなぁ、マリアをすいちょった・・じゃがな、マリアが選んだのはワシではなくお前、ワシはそれが許せんかった」 「・・・」 「ワシのもんにならんのなら、いっそ居なくなればいいんじゃ」 「そんな理由のためにお前は俺の目の前でマリアを殺した」 「そんな理由じゃと?貴様にワシの気持ちが分かるか鮭とばぁ!!」
5 イレイザー健◆X0GH
「このDQNが!!貴様の血は何色だ!」 「もう昔のようには戻れんようじゃな鮭とばぁ、早くその腰の銃を抜きな」 そう言うと巨躯の男は背中に背負っていた田代砲を正面に構えた。 「マリアァ!俺に力を!」 カウボーイ風の男も腰の44リボルバーマグナムを抜き走りだす。 「そこかぁ!」 「ガウン!!」 「なんのやらせはせんよ!!」 「ドウッ!!」 荒野に響き渡る二つの銃声。しかしいつになっても二人の勝負はつきそうになかった。
7 イレイザー健◆X0GH
「ぜえ、ぜえ、鮭とばよぉ、このままじゃ決着がつかんなぁ、ここは一つ早撃ちで勝負ってのはどうじゃ」 「はあ、はあ、いいだろう」「そんなら互いに背を向けて十歩歩いた時点で振り返り早撃ちするってのはどうじゃ」 「それでいい」 二人は互いに背を向け腰に銃をしまう。 「これで決着じゃ鮭とばぁ」「てめえの面もいい加減見飽きた、今度こそ終わらせてやる」 二人はゆっくりと逆方向へと歩きだす。 「いーち、にーい、さーん、しーい、ご・・」
9 イレイザー健◆X0GH
五歩に差し掛かった辺りだろうか、巨躯の男は田代砲を手に取り唐突に体をひるがえした。 「死ぬのはお前じゃ鮭とばぁ!!!」 が、しかし巨躯の男が見たものはすでに44リボルバーマグナムの銃口をこちらに向けているカウボーイ風の男の姿であった。 「お前は昔から変わらないね、ゴンズラ」 「ガウンッ!!」 44リボルバーマグナムが火を吹き巨躯の男の田代砲を弾き飛ばす。 「ぐぅっ!!」 「さあ、懺悔の時間だ」
10 イレイザー健◆X0GH
「ふ、はっはっは!ワシの負けじゃ鮭とばぁ!さあ、殺せ!」 巨躯の男は観念したように目をつぶる。 「あの世でマリアに謝罪しな」 カウボーイ風の男は巨躯の男の頭に狙いをつけゆっくりとその引き金を引く。 「ガチンッ!」 しかし44リボルバーマグナムは銃声の代わりに乾いた金属音を荒野に響かせた。「ど、どういうことじゃ鮭とば」 「ふ、俺も運が無い。どうやら弾切れだ」 カウボーイ風の男はカウボーイハットを深くかぶり直しその場を立ち去った。
11 イレイザー健◆X0GH
切り立った崖の側にぽつりと一つ寂しくある墓。墓石には回復厨マリアここに眠る、と記されている。 カウボーイ風の男はカウボーイハットを手に取り優しく墓標の上に置いた。 「これで・・これで良かったんだよな、マリア・・」 それに呼応するかのようにカウボーイ風の男が首から下げているペンダントが風に吹かれて「チャリッ」と優しく音を立てた。
12 イレイザー健◆X0GH
「これで話はおしまいさ、悪かったなこんなしけた話しちまって、酒の席が台無しだ」 「いや、すごい話だったよレッズ!そのカウボーイ今どこにいるのかな、神龍会に入ってくれれば心強いのにね!」 「ん?あ、ああそうだな・・」 レッズは困惑したような笑顔を浮かべた。しかし神龍会メンバーは全員気付いていた、レッズの腰で鈍く光りを放つその44リボルバーマグナムに・・・終 みんな神龍会に入ろう。