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【No.28 Res.0】 その9 1 鈴木♂ 1871年、代表作となる「毛皮を着たビーナス」を発表する。時にレオポルト、35歳。
※「毛皮を着たビーナス」 青年セヴェリーンは保養地で美しい未亡人ワンダと出会う。 セヴェリーンは毛皮を着たワンダに鞭で打たれる自分の姿を夢想するが、やがて それが現実のことになる。 セヴェリーンはワンダに求婚するが断わられ、ならば奴隷として仕えさせて欲しい と跪いて懇願する。ワンダは奴隷ごっこをする気はないと言い、奴隷契約書を書き、 殺生権をワンダに委ね、奴隷制度が法的に認められている国へ行くという条件を 出す。 セヴェリーンは自らの名も地位も棄て、一人の奴隷グレゴールと名前も変えて、 ワンダの奴隷として暮らすこととなる。 精神的にも肉体的にも責め抜かれるセヴェリーン、一方でワンダは男たちに囲まれて 享楽の日々を過ごす。 やがて、二人の前にギリシャ人の男が現われる。ワンダはセヴェリーンを縛り上げると、 ギリシャ人の男が激しい鞭で打ち据える。ワンダとギリシャ人はセヴェリーンの前で 愛し合い去ってゆく。 ワンダは二度とセヴェリーンの前に現われることはなかった。
「毛皮を着たビーナス」はヒットした。 ドイツやオーストリアだけでなく、ヨーロッパ中に翻訳され出版された。 スラブ的な男と女の関係、すなわち女王様と男奴隷の関係がヨーロッパで認められた わけではない。ヨーロッパの常識とは違う文化に興味を示した人は多かったのだろう が、むしろ、革命や戦争が続き、社会不安と新しいデモクラシーの時代への希望が 渦巻くという、価値観が大きく変動していた時代、とくにパリなどの都会では、 社会や政治と同様、恋愛においても従来のカトリック的なモラルを超えた何かを 求めていたに違いない。
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