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【No.32 Res.0】 その5 1 鈴木♂ そうそう。前回予告した「ある女性から人生最大の苦痛を与えられるのである」 の話をしなくては。 レオポルトに人生最大の苦痛を与えた女性とは、妹のローザである。 レオポルト17歳の時、ローザは流行病で亡くなってしまう。最愛の女性(妹として だが)がある日突然自分の前から姿を消して二度と現われることがない‥‥。 このことがレオポルトに深い悲しみと苦痛を与えた。 レオポルトにとって最愛の人がいなくなってしまうというのが鞭で叩かれるよりも、 刃物で切り裂かれるよりも苦痛であるのだ。 「毛皮を着たビーナス」の主人公はラストではワンダに捨てられてS転してしまう が、彼は決してワンダの奴隷になったことを悔いているのではない。 ワンダに永遠に去られてしまったことを嘆き悔いているのだ。 そして、新たに現われた愛する女を自分のもとにとどめるために、あえてS的に ふるまっていたのである、それが「毛皮を着たビーナス」の悲劇的なところ ではないかと私は勝手に思ってるんだけど、間違ってたらごめんなさい。
レオポルトが育ったルヴォフはガリチアの首都ではあったが、実際には劇場もない 田舎町だった。12歳の時に父の栄転で引っ越したプラハは大都会。 大小さまざまな劇場や寄席があった。 弟や妹に見せた人形劇で演劇に目覚めたレオポルトは、青年になるとますます 演劇熱がヒートアップし、それらの劇場や寄席に通い、演劇やコメディやダンスを 見てまわり過ごした。 贔屓の女優はチェコ国民劇場の看板女優コーラル夫人。 憎む男は殺し、愛する男は奴隷にする、スラブ的な鋼鉄の女をやらせれば 右に出るものはいないといわれた役者だ。 17歳の時には素人劇団を作ったりもし、ホンキで演劇の道へ進もうとも考えたが、 官僚の父に反対され断念した。
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