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【No.33 Res.0】 その4 1 鈴木♂ ザッヘル=マゾッホ一家がプラハへ引っ越したのは、1847年。 翌年の1848年にはフランスで二月革命が、それに影響されてドイツ、オーストリア 周辺の各地で三月革命が起こる。自由主義革命に加えて、ハンガリーの独立反乱 など民族独立運動的な革命でもあり、しかし、すぐに沈静化する‥‥、 世界史得意じゃねえからナァ、これでいいんだろうか。 当然、プラハでも市民の暴動は起こったがオーストリア正規軍が出動し、すぐに 鎮圧された。 この時に、市民軍に皮のジャケットを着て拳銃を腰にさした女戦士がいて、 レオポルトは彼女に憧れて市民軍に入って戦ったとする評伝があるそうだけど‥‥。 時にレオポルト13歳、しかも警察署長の息子で、それはないだろうな。 いっくらなんでも作り過ぎだ、と思う。 しかし、レオポルトの父というのも警察署長でありながらもルヴォフの田舎育ちで のんびりした人物で、どっちかというとリベラルな考え方の持ち主だったという。 こういう市民革命や民族革命の時は微妙な立場にあったようである。
さて、この頃、レオポルトは両親から人形劇のセットを買ってもらった。 レオポルトは自分で台本を作り、弟や妹や友達を集めては人形劇を見せていた。 人形劇の台本がどうやらレオポルト・フォン・ザッヘル=マゾッホの処女作らしい。 この台本がどんな内容のものかはわからないが、多分、子供の頃、乳母から 聞かされたスラブの昔話を脚色したのだろう。 しかし、それを聞いたからと言って弟がマゾに妹がサドに目覚めることはなかった。 弟も妹も友達もお兄ちゃんのちょっぴり怖いけど面白い人形劇だとしか思って いなかったようだ。彼らは目覚めなかったが、レオポルトが目覚めた。 何に目覚めたかというと、演劇に目覚めてしまった。虚構を演じて観客から 喝采を得る、この快感に目覚めてしまったようだ。
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