1 鈴木♂

「花と蛇」を語る

といっても今年公開された東映映画ではなく昭和49年(1974)に公開された
日活映画のお話です(笑)。

この映画は新潟市シネウインドで新作の「花と蛇」と同時上映されたので
御覧になった方も多いと思います。
ストーリーは原作と大幅に違い、唯一原作に忠実な箇所は社長夫人が誘拐されて
監禁調教される事くらいなものです。

大富豪でS男性の遠山社長(お寺みたいな大豪邸に住んでます)が自分の
奥さん(谷ナオミさん)を調教しようとするのですが、それをことごとく
拒否されて仕方がなくなった遠山社長は最後の手段として部下の男性(主人公)に
奥さんを誘拐して監禁調教する様に命じます。

誘拐された遠山夫人はその男性の家で監禁調教されるのですが、その家が
タダの家ではありません。
ある、のんびりとした商店街の真ん中に間口の狭い小さなアダルトショップ
(というか大人のオモチャ屋)があり、それが主人公の家なのですが
その地下には家よりも広いのではないかという巨大な地下室が潜んでいるのです。

そしてそこでは密かにアングラなSMポルノ8ミリ映画(当時の言い方だと
ブルーフィルムですね)が撮影され、それを密売しているというとんでもない
家なのですが、それを全て指揮しているのは店の経営者でもある主人公の
母親なのでした。

そして遠山夫人と主人公と母親の三人によるSMホームドラマが展開されます。
(PC)
2 鈴木♂
男性は普段、家にいて遠山夫人を調教しているのですが、社長に調教の報告を
する為にたまに出社すると、その間に息子を取られた嫉妬心にかられた母親が
SM仲間の男たちを呼んできて地下室で遠山夫人を責めるという凄い展開です。

この映画は出演者のキャラがとにかく強烈で、遠山家のメイドさんなんか
普段は遠山社長に庭で浣腸されたりして苛められているのですが、
私服になると鹿鳴館の舞踏会ですか?と言いたくなるような超サイケな酒豪で男好き。

主人公の母親も元は米兵相手の女性なのでタフでハードな男勝りの女性
なのですが息子を溺愛。

主人公は母親の客の米兵を少年時代の自分が射殺したのではないかという
トラウマに悩むちょっとメンヘラな男。

そんなこんなでストーリーが展開して行くのですが、やがて主人公と遠山夫人の
間に愛が芽生えて、ラストでは遠山夫人が旦那の待つ豪邸に帰るよりも主人公と
暮らす事を選ぶという原作を徹底的に戯画化したハッピーエンドなお話です。

脚本は後に「陽炎座」、「ツィゴイネルワイゼン」、「セーラー服と機関銃」
「天国への百マイル」などの脚本を書いた田中陽造氏。
遠山社長役は現在、一人芝居「土佐源氏」で有名な舞台俳優の坂本長利さん。
監督は最近亡くなられましたがTVの二時間ドラマ演出でも有名な小沼勝氏
でした。
(PC)
3 鈴木♂
はっきり言って、ここまで原作と違うと田中陽造作「花と蛇」みたいな映画
なのですが、この映画の隠されたテ−マって母親に溺愛されて、その呪縛から
抜けられなくて、もがいている男が運命の力によって、ある女性と出会い
その女性との愛によって精神的な自立を果たすというものじゃないかと思います。

映画のラストシーンでは二人がこれからも一緒に暮らしていく事を暗示する
小団円を迎えますが、彼らにとって本当の人生はそこから始まる様な気がします。

私がこの映画をビデオで初めて観たのは'80年代になってからの事でした。
家庭用ビデオデッキが普及する'80年代までSMマニアは8ミリ映写機か
映画館でしかSMシーンを見る事ができなかったのです。

今はネットを通じて色んな国の有料・無料のSMサイトの画像や映像を
自由に見る事ができますから本当に幸せな事だと思います。
(PC)