1 鈴木♂

SM雑誌のこと

私が初めてSM雑誌という物を見たのは小学校六年生の時でした。
正確に言うとそれはSM雑誌ではなく、旅行に行った叔父が車内の暇つぶしに
買ったある一般週刊誌なのですが、そこに「最近のSM雑誌」という感じの記事が
掲載されているのを見たというのが私のSM雑誌初体験でした。

それを見た私の正直な感想は、はっきり言って何故裸の女性が縛られているのか
理解できませんでした。
その記事にはSM小説の一部も抜粋されていて、そっちの方がドキドキした事を
覚えております。
それから中学に進んだのですが、男子中学生なんて性的好奇心の塊りですから
部活動や級友の男子生徒と色んな情報交換をしてSMという物がどういう行為
なのか、たちどころに理解しました。

その当時、私は本屋によく通う少年でしたから放課後、部活動が終わった後に
本屋に寄ってから家に帰るというのが私の日課でした。
その本屋で当時中学生の私が何をしていたのかと言うと、新刊のマンガ雑誌や
単行本を立ち読みした後に、ドキドキする心臓を押さえ、レジに座るオヤジの
様子を横目でチラチラと見ながら、あくまでもさりげなく「ふ〜ん」という感じで
SM雑誌をパラパラとめくっているという、今から考えると挙動不審で純情な?
少年だったのです。

その当時(昭和40年代後半)、私の住んでいる田舎町では「SMマガジン」という
SM雑誌が主流を占めていて、「奇譚クラブ」は見かけた事がありませんでした。
鈴木♂が「奇譚クラブ」を初めて見たのは'79年に上京してから神田の古本屋街で
見たのが最初だったと思います。
なお当時の「SMマガジン」の編集長が濡木痴夢男氏だったという事を鈴木♂が
知ったのは、ほんの近年の事でした。
(PC)
2 鈴木♂
この「SMマガジン」は今でも私の手元に一冊あるのですが、その表紙や背表紙を
見るとちょっと奇妙な事が書いてあります。

「サスペンス&ミステリー・マガジン」つまりこの雑誌はサディズムとマゾヒズム
の雑誌ではなくサスペンスとミステリーの雑誌なんだよ、という意味です。
雑誌の中身はSM雑誌以外の何者でもないんですけどね(笑)。
じゃあ、なんでそんな事を表紙に書いてあるのかというと、創刊時に当局や
PTAなどの教育関係者から目を付けられる事を防ぐ為に、そういう偽装をして
この雑誌は創刊されたのでした。
噂によると創刊時には「野獣死すべし」、「蘇る金狼」などのハードボイルド作家の
大藪春彦氏の作品まで掲載して、この雑誌はあくまでもサスペンスとミステリー
の雑誌なんだよと偽装していたそうです。

これと似た例は他にもあります。
私は未だに未見なのですが「サン&ムーン」という雑誌も当時あったそうです。
サン&ムーン=SMという意味ですね。
では何故ここまで偽装してSM雑誌を発行しなければならなかったので
しょうか?
その理由は定かではありませんが当時、普通のアダルト雑誌よりも遥かに厳しい
圧力が各方面からSM雑誌に向けられていたという事は事実です。


現在、誰でも自由にSMサイトを作る事ができます。
携帯からであっても無料レンタルサーバーを借りて、自分の好きなSMサイトを
無料で自分の自由に作る事ができます。
私も以前、このサイトだったか愛好会サイトだったか忘れましたが、私を含め
SとMというマイノリティの世界に生きる人たちは、インターネットという物に
感謝しなければならないと書いた覚えがあります。
それは今でも変りないと私は思っております。
(PC)