1 鈴木♂

高手小手縛り 2

あるSMサイトを見ていましたら「高手小手縛りは「平家物語」にも登場した」と
驚くべき文章が書いてありましたので私は早速調べてみる事にしました。

「平家物語」とは盲目の琵琶法師が琵琶を弾きながら語った口伝の物語で、元々は
テキスト化されておらず、応安四年(1371)に明石覚一が初めて公式にテキスト化
したものが現在日本に残る一番古い「平家物語」とされております。

それとは別に日本の古典芸能の方で高手小手縛りを調べてみると、寛延二年
(1749)に並木千柳と三好松洛が合作した浄瑠璃「源平布引滝」に高手小手縛りは
登場致します。
「源平布引滝」は翌年に歌舞伎化され、その四段目の「松波琵琶の段」で源氏の残党
多田蔵人行綱の娘と疑われた少女・子桜を拷問するシーンで高手小手縛りは登場
致しますが、その原文をちょっとだけ書きますと。

「平次は用捨もあら縄たぐり、逃行く小桜わし掴み、ぐっと引寄せ高手小手、
「サアこれからが根くらべ、エヽぬかしあがれ」と竹箒、遠慮会釈も小腕に
ぐつと、差込みこぢ上ぐれば、「アレエ/\。術ないはいの/\」
「サア苦しくば白状せい」「イヽヤ知らぬ知りませぬ」「ヤ知らずばかう」と
竹箒またもやぐっとこぢあぐれば、あっとばかりに身をもだえ、苦しむ声は
玉きわる枯野が原の雛うずら、音を啼きからす風情なり。」
(PC)
2 鈴木♂
実を言いますとこの「源平布引滝」は「平家物語」を基にしたサイドストーリーで
実際にあった事件や物語を元にサイドストーリーを創るというのは、「忠臣蔵」を
見ても分かる通り、日本人の得意とする分野です。

本当に「平家物語」の中で高手小手縛りが登場するのか「平家物語」全文を読んだ
事が無い私には分かりません。
しかし寛延二年という江戸中期には高手小手縛りという緊縛が一般人にも普通に
知られていたという事が今回分かって良かったと思います。

余談ですが、現代の日本で江戸時代の捕縛術を縛れる現役のプロの縄師さん
は濡木痴夢男氏だけだろうと私は思っています。
濡木氏は以前、シネマジックで「女囚幻想」という江戸時代の女囚をモチーフに
したSMビデオの縄師を務めた事がありますが、江戸時代そのままの捕縛術では
現代のSMにおける緊縛と余りに違いがあり過ぎる為に、濡木氏が自己流に
アレンジして緊縛を行ったそうです。

なお、鈴木♂はコアな緊縛マニアではありません。
単なる知りたがりというのが正解だろうと私は思っています(笑)。
(PC)