1 鈴木♂

「奇譚クラブ」の絵師たち

という文庫本が最近発売されまして、私はすぐに買い求めました。
読んでみるとこれが本当に面白い。

前作?の「奇譚クラブの人々」も面白かったのですが、この本はもっと
ディープに昭和20〜30年代の日本のSM事情の事が書いてあって
資料としても超一級です。

著者の濡木痴夢男(ぬれきちむお)という方は昔からSMビデオ制作で
有名な方なのですが、かつて奇譚クラブの作家でもあり裏窓の編集者でも
あった方です。
この本では奇譚クラブ→裏窓の編集長だった須磨利之氏(美濃村晃)との
交流を軸に当時のSM雑誌編集部の内情や作家たち、読者、マニアや
世相などが生き生きと描かれていて今まで謎が多かった昭和のSMという
隠された世界がやっと明らかにされたという気が致します。
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2 鈴木♂
前作?の「奇譚クラブの人々」も私にとっては目からウロコ状態だったのですが
この本はそれを上回るすごい内容です。
当時のSM雑誌の作り方や警察との攻防戦、日本初?の緊縛ライブ、
当時のSMマニアの実態など初めて知る驚くべき内容ばかりで、私にとっては
「点」でしか知らなかった知識がやっと繋がって一本の「線」になったという
気がしました。

私がこの本で驚いた事はいっぱいあるのですが日本初のSM雑誌・奇譚クラブ
の作り方って現代のweb上のSMサイトと共通点が多く見られる事です。

奇譚クラブは元々「奇譚」という名前の通り世界中の珍談奇談を集めた
大阪の一般風俗誌でしたが売れ行きが低迷し、社長の吉田氏が海軍時代の
戦友の須磨氏に相談した事が誕生のきっかけでした。
SMマニアで京都美学校出身の須磨氏は奇譚クラブを日本初のSM雑誌に
改造すべく編集長として一人で孤軍奮闘を始めたのでした。

ところが日本初のSM雑誌ですから作家も画家も読者もゼロの状態です。
じゃあ、どうやって作ったかというと編集長の須磨氏が孤軍奮闘し、一人で
何人ものペンネームを使い分け、SM小説を書き、その挿絵を書き、
挙句の果てには大阪の街頭に出て売って歩いたそうです。
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3 鈴木♂
やがて隠れていたマニアたちの目に留まり、奇譚クラブは売れ始めました。
そうなると読者からの体験告白や小説、イラストの投稿が来る様になって
それを元にして須磨氏は小説を書き、有望な読者に小説を書く様に勧め、
SMマニアの為の雑誌として奇譚クラブを完成させていったのです。

面白い話としてはマニア好みの良い挿絵が書ける画家には自分の持つ
イマジネーションの世界をフルに発揮して貰う為にまず絵を連作で
描いて貰い、それに須磨氏が文章を付け足して一編のSM小説として
完成させたなんて事もあったそうです。

やがて奇譚クラブは日本で唯一のSM雑誌ですから日本中のマニアの
交流の場となりました(読者交流欄「奇譚クラブサロン」)。
そして数多くの人気作家や画家を生み出す事になるのです。

と、ここまで書きましたがこれって現在のSMコミュニティサイトと
同じなのでは?と私は思いました。
まず管理人さんがサイトを作り、宣伝し、そこに隠れたマニアが集まる様に
なって交流が広がり、そこから自分の目指す色んな方向にマニアが進んで行く。
その意味においても奇譚クラブという雑誌は偉大だったんだなぁと思います。
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