1 鈴木♂

SM雑誌の事 5

私が買った事のあるSM雑誌の中で異質だと思ったのは'90年に創刊された
「ビザールマガジン」でした。
この雑誌は隔月刊の雑誌でちょっと調べてみましたら'04年3月号を以て廃刊と
なっていました。

この雑誌がSM雑誌だと言い切るにはちょっと語弊があるのですが、日本でも
'89〜'90年のバブル前後にボンデージファッションが流行っていて、その流行
を取り入れたフィティシズム&SM&サブカルチャー雑誌だったと思います。

では、どんな内容の雑誌なのかというと、まずカラーグラビアをラバーやレザー
のボンデージファッションを着たモデルさんが飾り、秋田昌美氏や北原童夢氏の
評論が掲載され、それと同時にSMクラブ情報なども載っているという従来の
SM雑誌とは趣が大きく異なるという雑誌でした。

フィティシズムという非常に大きなカテゴリーを扱った雑誌でしたので脚フェチ
の次のページにはスカトロジーのページがあり、その次のページにはピアスと
タトゥが載っているという風に、悪く言うとまとまりに欠けているというか
今読み返してみても非常に混沌とした雑誌だったという気が致します。
その代わり、毎号何が出てくるのか分からないというビックリ箱みたいな雑誌で
確か一度だけサエキけんぞう氏も短編小説を掲載した事がありました。
なお上記で'90年創刊と書きましたが、その頃は次号の発売日が未定という
不定期発行状態で、それから'92年に新規に創刊し直して隔月刊誌となりました。
(PC)
2 鈴木♂
'90年頃のあるビザールマガジンを見てみますと有末剛氏の意外な緊縛を見る
事ができます。
皆様も御存知の通り現在、有末氏は麻縄を使った純日本風?の緊縛を行って
おりますが、このビザールマガジンではフェティシズムという雑誌の性格に
合わせて、綿ロープを使ったアメリカのボンデージ風な単純な緊縛を展開して
おります。
この記事というか緊縛の解説を有末氏自身が書いていて、当時の有末氏自身の
緊縛というものに対する考え方が分かる貴重な文章なのかも知れません。
その文章の中で有末氏は、日本の文化と外国の文化の違いによる緊縛論を
展開していて非常に興味深いので、ちょっとだけここに書いてみます。

「日本の文化には無駄の美学が生み出したところの様式がある。
 建築にしかり、茶道、華道にしかり、あらゆる文化芸術の類いの中に
 ”捨て縄”に見られるところの、余白というか、間と言うか、いわゆる
 無駄の存在がある。
 無駄が日本の文化ならば”捨て縄”もまた日本の文化に支えられた所産
 であると言えなくもない。
 日本の緊縛が”捨て縄”の美学にエロチシズムの極まりを見い出そうと
 すれば、それとは全く対称的に、外国のボンデージに見られる緊縛は、
 確実な拘束と、無駄の排除に見られる合理主義のエロチシズムの到達点を
 見い出そうとする。
 女体を拘束するために何が一番早くて、確実な方法なのかと考え出す
 思考方法は、外人が道具を考え出す方法論と同じである。」

縄師という職業は当たり前の話ですが、オファーがあれば自分の趣とは異なる
緊縛もしなければなりません。
有末氏が自分の緊縛の方向性とは正反対の緊縛を要請されて、その仕事を
こなして行くうちに考えた事がこの緊縛論なんだろうと思います。

ちなみに鈴木♂の緊縛の方向性は緊縛というよりボンデージに近いです。
かと言って雪村春樹氏ほど徹底してはおらず、志摩紫光氏みたいに上手くは
ありません (-_-;) 。
あくまでも日本の緊縛を二つの方向性に分けるとしたら、鈴木♂はそっちの
方向だという事です(笑)。
(PC)