彩 愛 美 詩歌集

過去ログ198 2015/3/9 22:56

▼彩 愛 美
殺人街の善意

ここは 殺人街
犯罪なんて
日常茶飯事
人が人である事を
忘れた街

もはや ここには
人の心なんて
一つ足りとも
残っていないと
想われていた

誰もが 近付かない
隔離された街
全く人の出入りが
無い街でも無い街

そんな街で
一人の男が
小さな命を 救った
何処の誰だかも解らない
何の縁も無い命
何を想い この命を
救ったのだろう

取るに足らないような
たった一つの
小さな善意
この街の中で
初めて歩き出した
大きな善意への一歩
暑い暗雲から射し込む
一筋の希望の
光だった


2015/3/9 22:56
HP

▼彩 愛 美
幕が上がる


クラクションの果て 辿り着けないのは
ずっと引き出しの奥 仕舞い込んだままで
想い出の欠片 探し出せず終いに
幾多の夢の数々を 諦めて来たから

一つの恋が終わって 一つの幕が降りる
次の幕が上がるまでの 小休止

新しい恋のシナリオもまだ 出来ていなければ
新しい配役だって 揃えようも無いのに
今終わったばかりの 恋の反省会も
頭に入らないまま 新しい恋を探していた


幕が上がる舞台 ときめきの瞬間
飛び込んで来る スポットの眩しさに眩む
抜け落ちるセリフ 真っ白になる頭
アドリブでも何でも 度胸を決めなければ

一つの本の始まり 舞台稽古の最中
筋書き通りには 行かないにしても

新しい恋のエントリーの キャスティング
オーディションに受かる 自信も無いままに
もう終わった物への 未練脱ぎ棄てて行く
板に昇る覚悟を 心に刻み込むように


ファーストライトの中から 生まれ出て来る
誰よりも一番この舞台の上で 輝き放つ想い


新しい恋の幕が今上がる 万感の想い
積み重ねて歩いた 軌跡を辿るように
今から始まる恋の ページを開いて
満席の拍手を浴びて これからの恋を演じて行こう






2015/3/4 22:40
HP

▼彩 愛 美
こぼしたコーヒー
いろいろとひろげて
散乱したテーブルに
ふと手をすべらせて
一口と付けていない
コーヒーをこぼした

大切な書類やノート
本もリモコンも全て
コーヒーの海の中に
沈んで染まって行く
あっと言う間の事に
為す術も無いままに
時は無情に過ぎ去る

急ぎ拭き取らないと
いけないはずなのに
暫く見て居るだけで
体が動こうとしない
金縛りが解けた風に
ティッシュを探して
拭き取ってみるけど
既に手遅れの後始末
消せない跡を眺めて
落ち込んだりもする

近くにコーヒーとか
置くのが悪かったか
見もせずにカップを
取ったのが悪いのか
元に戻せない状況に
後悔してもし切れぬ
事実だけを残して今

2015/3/1 23:16
HP

▼彩 愛 美
想い出だけでは


ねぇあなたを 嫌いじゃなかったと
言う事だけは 認めて上げるわ
だからと言って あなたを今でも
愛しているだなんて 想わないでね

あなたと出逢ってから 今日の日まで
たくさんの想い出 積み重ねて来た

ただアルバムの中に 鏤められただけの
動く事の無い 写真の数々
終わった日々は 過ぎ去って行く夜明けの星


進化と退化を 繰り返す心
切り棄てて行く恋 始める恋
失くした物に 未練などは無く
どんな言葉も 心には届かない

コースを大きく 外れて行く想い
電波も届かない 遠い場所まで

もぅ想い出だけでは 生きては行けない
停まった時間に 何の意味も無いわ
立ち留まって振り向く程の 愛はもぅここには無い


石化した想いに どんな力を加えても同じ
感動も産まないただの 儀式でしかないわ


あの頃に見えていた 未来が見えない
だから歩けない 同じ道の上を
分岐した未来 棒の両端出逢う星も無い




2015/2/25 22:59
HP

▼彩 愛 美
見られている

一人で居ても
必ず何処かに
視線を感じる

盗聴器だとか
盗撮では無く
鏡や硝子とか
映り込む全て
もう一人居る
私が住み着き
四六時中私を
見つめて居る

誰に話しても
気のせいだと
笑われるだけ
けれど確かに
見られて居る

外に居ようと
内に居ようと
気付いてから
落ち付かずに
私を映す物を
覆い隠す事が
出来ない限り
必ず映り込む
私の視線から
逃れられない

解ってくれぬ
私の影が私を
全て見て居る
どんな時にも
気が抜けない


2015/2/22 23:24
HP

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