1 鈴木♂

銭形平次を読む

蒲原祭りも始まって今年も夏祭りのシーズンを迎えた新潟県内なのですが、
このサイトを御覧の皆様方も如何お過ごしの事でしょうか?。

最近は参院選候補者どころか現役の衆院議員も車で地元選挙区を廻っているので、
衆参同時選挙というか解散総選挙の可能性がまだまだあるみたいです。
そうなると土壇場で消費増税見送りという可能性もありますから、ここしばらくは
政局に注意したほうが良いみたいですね。

4月に始まった鈴木♂のバイクのレストアのほうはタンク、キャブ、タイヤと進んで
次はバッテリーを新品にしてエンジン始動確認かブレーキ系統の整備です。
キャブだってフロートの組み違いをしたりフロート室ドレン穴の掃除を忘れたりと
まだ全てのキャブで油面の確認を終わってはいないのですが、来年の春くらいに
までにはナンバーを付けてちゃんと公道を走れるようにしたいなと思っています。

しかし今の時代って通販が発達していてお金さえ出せばかなりの部品がネットで
買えますから本当に便利なものですね。
バイク屋さんに注文し忘れたキャブ・パイロットスクリューのOリングなんて
ヤフオクの部品屋さんから買いました (ー_ー;) 。
(PC)
2 鈴木♂
鈴木♂は前から何かの作業をしながらyoutubeで青空文庫とかの朗読をよく聞いて
いるのですが、最近は野村胡堂の銭形平次捕物控をよく聞いています。
そして私は岡本綺堂の半七捕物帳も既に全話読んでいるので、平次親分と半七親分
の比較をふとしてみたくなりました。
ですから今回のネタはその比較というか単なるつまらない私的な考察です。

 青空文庫 作家別作品リスト:No.1670 野村 胡堂

   https://www.aozora.gr.jp/index_pages/person1670.html (PC)
(PC)
3 鈴木♂
◎時代背景

・平次親分:第1話〜第29話くらいまで寛永〜慶安年間(1624年〜1652年)、
 第38話「一枚の文銭」は寛文5年(1665年)、それ以降どこから変わったのか
 はっきりしませんが文化〜文政年間(1804年〜1830年)の辺り

・半七親分:天保12年(1841年)〜慶応三年(1867年)

野村胡堂は文藝春秋から原稿を依頼されたときに最初は舞台を江戸後期にしようと
思っていたらしいのですが、同じ江戸後期を舞台にした半七捕物帳の人物描写や
風景描写にはとても敵わないという事で舞台を江戸初期にしたんだそうです。

それでも最初の頃は将軍家光とか島原の乱(1637年)の残党とかが出てきたりして
比較的真面目にやっていたのですが、後になると元禄年間が大昔の事になったり
天明の大火(1788年)後のお話になったりして、お前はタイムトラベラーなのか
と言いたくなるくらい平次親分は時空を超越しています。
まあ銭形平次捕物控って基本的には時代劇ファンタジーだという事ですね。

--------------------------------------------------------------------

◎配偶者

・平次親分:両国の水茶屋で働いていたお静
・半七親分:先代親分吉五郎の娘お仙

これは近年、銭形平次捕物控を連載している木村直巳さんが描いたお静です。

https://d17x1wu3749i2y.cloudfront.net/2019/01/09/04/25/19/ea5bf7d8-ff25-468c-b407-906b69a73057/file.jpg (PC)

お静は下ぶくれの顔だったという描写が原作にありますから木村直巳さんのマンガ
は非常に正確だという事ですね。

 ガイドワークス 銭形平次捕物控 金色の処女(こんじきのおとめ)

  https://guideworks.co.jp/sports-culture/20190411j/index/735 (PC)

ちなみに江戸の水茶屋って今のメイドカフェとかAKB商法に近いものがあって
水茶屋の看板娘だとアイドル扱いされて浮世絵とかになったりもしました。
(PC)
4 鈴木♂
◎経済状況

・平次親分:ド貧乏
・半七親分:割と裕福

平次親分がどれくらい貧乏なのかというと子分の八五郎の給料を払う為に
女房お静の着物やかんざしを質入れしたりしていたという描写があります。
つまり平次親分の収入は南町奉行所から貰う僅かな給金のみだったらしく
直接の上司である吟味与力・笹野新三郎も平次親分には殆どお金をくれません。

半七親分は大商人や旗本から仕事を依頼されたりしてかなりの高額報酬を貰って
いるので常に数十両くらいの貯えは余裕で持っていたみたいです。
半七親分は江戸のシャーロック・ホームズなのでそういうところは岡本綺堂も
本家にならったという事でしょうか。
アイリーン・アドラーが出てくるボヘミアの醜聞のときのホームズなんて
今のお金で数億円の報酬を貰っています。

----------------------------------------------------------------------

◎住居

・平次親分:神田明神下の二間(六畳と三畳?)しかない長屋
・半七親分:神田三河町の平屋だが手下や下っ引きの待機室まである割と広い家

平次親分は貧乏なので下女すら雇う余裕は無く、長屋暮らしのはずなのですが
何故か縁側や庭があったりする不思議な描写もあります。

----------------------------------------------------------------------

◎十手

・平次親分:銀メッキされた鉄の十手を捜査のときは常に懐に入れています
・半七親分:使う用事のあるときだけ鉄の十手を革袋に入れて持ち歩きます

ここで面白いのは時代劇に出てくる平次の子分八五郎も十手を持っているという
事です。
ところが十手というのは奉行所から岡っ引きに任命された人だけが持てる貸与品
ですから、本来は子分とか手下の者は十手を持てません。
私はこれを時代劇ドラマだけのフィクション設定なのかなと思いましたが
原作を読んでも八五郎はちゃんと十手を持っています。

これはどうも平次親分が八五郎の給料もろくに払えないようなド貧乏だったので
奉行所が八五郎も岡っ引きに任命して給料を払うようにしたという設定のようです。
ですから原作を読むと八五郎も周りの人たちからは八五郎親分と呼ばれています。
(PC)
5 鈴木♂
◎拷問

・平次親分:拷問どころか捕縛も殆どしませんが真犯人をおびき寄せる為に
      嫌疑者を拷問に掛けたというトリックを使う事があります
・半七親分:拷問は自分の職務外という非常にビジネスライクな理由でしませんが
      容疑者をぶん殴ったりはします

平次親分は拷問をしませんが三ノ輪の万七とか他の岡っ引きはやたらと容疑者を
拷問しようとします。
でも実際には町奉行所でも拷問なんてされる事は殆ど無く、その理由として
捜査の報告書は町奉行どころか老中(閣僚)クラスにまで上がってしまうので
拷問を行う町奉行や与力は職務遂行能力が低いと評価されるからなのでした。

 青空文庫  拷問の話 岡本綺堂

  https://www.aozora.gr.jp/cards/000082/files/49549_33631.html (PC)

これは岡本綺堂が新聞記者だった明治時代に町奉行所の元与力だったという人に
インタビューした事を元にした記事なのでかなり正確じゃないかと思います。
時代劇ドラマだとすぐに町奉行所では拷問を行いますがそんな事は無かった
という事ですね。

---------------------------------------------------------------------
◎考察

銭形平次捕物控が文藝春秋社オール読物で連載が始まったのは昭和6年(1931年)
の事でした。
その頃の日本は世界恐慌による不景気と東北地方の冷害で苦しい時代だったのですが
それでもまだ戦時体制という時代ではありませんでした。
そしてその頃の銭形平次捕物控は政情不安定な江戸時代初期の事を描いていて
将軍家光暗殺未遂事件や由井正雪&丸橋忠弥によるクーデター未遂事件の残党が
江戸で大規模テロを起こそうとするという物騒なお話が多々ありました。

しかし時代が進んで昭和7年(1932年)になると515事件が起こり犬養首相が
暗殺され、昭和11年(1936年)になると226事件というクーデター未遂事件が
起こります。
ですから銭形平次捕物控としても将軍暗殺未遂、クーデター未遂の残党による
江戸(東京)での大規模テロといった江戸時代初期の事が小説の題材として
書けなくなったんじゃないのかなと思います。
そしてその結果、舞台を寛永〜寛文年間から文化〜文政年間に移して市井の
普通の事件を題材にするようになったんじゃないのかと。

これらはあくまでも私の想像なのですが海野十三も新青年に深夜の市長の連載を
始めた直後に226事件が起こり、その所為でストーリーを変えなくてはならなかった
と述懐しているので、タイムトラベラー並みに時空を飛んでしまった平次親分も
当時の状況としてはまあ仕方がなかったのかなあと思います。
(PC)